データで読み解く 日本の食料事情

大根の出荷と消費のゆくえ

現在、スーパーで見かける大根の多くは、青首大根と呼ばれるF1品種です。 青首大根は、1970年代以降に普及したF1種の代表例で、従来の白首大根に比べて形状や品質が揃いやすく、耐病性・収量性にも優れているため、全国の主力品種となりました。 F1種とは、特定の親品種を交配して得られたもので、同様に他の多くの野菜も市場で流通しているものの大半がF1品種です。生育も早く、環境への適応力も高いため、日本全国での栽培が可能です。 また、大根は戦前から国内生産が主流であり、現在でもその傾向は変わっていません。 一方で、切干大根をはじめとする乾燥大根については、中国から毎年一定量が輸入されており、主に業務用の加工原料として利用されています。 国内では高齢化や労働力不足により、切干大根の手作業による加工が減少しており、その補完として輸入品の活用が進んでいます。

1. 大根の戦後史

戦後、大根の品種や栽培方法は大きく変化しました。固定種からF1品種へ、そして青首大根の普及までをタイムラインで辿ります。

1940年~戦後しばらくは固定種が主流

大根は戦前から各地で栽培されており、少ない肥料で栽培が可能かつ沢庵漬けや干し大根にすることで長期保存が可能なため戦中の食料難の時代においても栽培が続きました。

1960年~F1種の導入による大量生産時代の幕開け

戦後、高度経済成長期において、大量生産の必要性が高まりましたが、固定種は同じ品種内でも生育や形状にバラつきがでることがあり、収量時期や品質も安定せず大量生産には不向きでした。そこで、品質が均一で大量生産に向いているF1種の開発によって、問題は解決しました。それに伴い固定種の栽培は徐々に減少しました。

1970年~F1種の定着、青首大根の席巻

F1種が誕生した当初は白首大根が主流でしたが、耐病総太りという青首大根のF1品種が特に優れていたため、現在では青首大根が主流となっています。

2.大根の生産・流通

✅出荷量は半減─家庭から遠ざかる大根の存在

大根の出荷量は過去数十年にわたって減少傾向が続いており、この40年間でピーク時の約半分にまで落ち込んでいます。特に、最も出荷量の多い秋冬だいこんの減少幅が大きく、春や夏の作型は比較的減少が緩やかです。このことから、一年を通じた大根の需要そのものが縮小していると考えられます。
一方で、10アールあたりの収量は40年前と比べておよそ1.2倍に増加しており、栽培技術や品種改良の進展によって、同じ面積からより多くの大根を収穫できるようになっていることがわかります。

野菜出荷統計より当サイト作成

大根は調理に手間がかかる野菜(皮むき・下茹で・煮込みなど)であり、保存期間も短めです。このように現在の忙しいライフスタイルには合わなくなっていることが、出荷量減少の背景として挙げられます。

📝春大根、夏大根、秋冬大根について

大根は作物統計や栽培実態に基づいて、春、夏、秋冬の作型に分かれます。作型とは作物の栽培や収穫の時期・方法のことであり、大根は収穫時期によって、この3通りの作型に分類されます。たとえば、温暖な地域では冬でも露地栽培が可能であり、冷涼な地域では夏の出荷に適しています。このように、産地ごとに異なる気候条件を活かすことで、大根は一年中安定して供給されており、国内流通量の大部分を国産が占めています。

作型 種まき時期 収穫時期 主な地域
春大根 2月~3月 4月~6月 関東、四国など
夏大根 5月~6月 7月~9月 北海道、東北など高冷地
秋冬大根 8月~10月 10月~2月 全国広く

✅需要は減りつつも全国各地で続く生産体制

出荷量は年々減りつつも大根は全国各地で広く生産されています。最も多いのは千葉県です。その他、青森県や北海道、神奈川県、鹿児島県なども主要産地として知られています。大根は年間を通じて流通していますが、前述の通り、地域や作型によって出荷の時期は異なります。

大根出荷量 都道府県別割合(令和4年実績)

作物統計調査 作況調査(野菜)(農林水産省)より当サイト作成「野菜生産出荷統計」長期累年 品目別(季節区分別)作付面積、収穫量及び出荷量累年統計 根菜類 大根

3. 大根の輸出入

✅【輸出】少量だがアジア向けに輸出実績あり

日本産の大根は、主に国内消費向けに生産されていますが、ごく少量ながら香港などのアジア諸国への輸出実績もあります。特に品質や安全性への信頼が高い日本産青果物は、シンガポールや香港など富裕層の多い市場で需要があり、大根も例外ではありません。輸出量は限られるものの、付加価値の高い商品として扱われ、現地の日本食レストランや高級スーパーなどで取り扱われています。

貿易統計(財務省)を元に当サイト作成
HSコード0706.90-000に基づく。大根以外の根菜を一部含む。

貿易統計(財務省)を元に当サイト作成(HSコード:0706.90-000 大根等)

✅【輸入】中国産の切干し大根がメイン

乾燥大根は、主に切干大根として毎年数千トンが海外から輸入されています。ほとんどが中国からのもので、国産の収穫が少ない年には、生の大根も一時的に輸入されることがあります。ここでは、乾燥大根の輸入量の変化をグラフで紹介しています。

直近10年以上は輸入量3000~4000トンの間で推移しています。ここ数年は単価の上昇が著しいです。

貿易統計(財務省)を元に当サイト作成(HSコード:0712.90-040 乾燥大根)

輸入先は例年、ほぼ中国となります。中国は大根の生産が非常に盛んであり、乾燥大根(切干大根を含む)の加工も輸出産業として確立しています。日本はこの供給に依存する構造を持ち、価格面・供給面で中国産に大きく依存しています。

最終更新日:2025年5月27日